河野弁護士対談
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■2011年1月22日 雨宮処凜さん vs 河野聡対談
■2010年11月23日 弘至孝公証人 vs 河野聡対談
■2009年8月16日 宇都宮健児氏vs河野聡対談
 
2009年9月21日 湯浅誠氏vs.河野聡対談
 
河野 : 今日は遠方からようこそいらっしゃいました。
湯浅さんは自立生活サポートセンター「もやい」と反貧困ネットワークの事務局長をしておられます。また、2008年12月には「反貧困―「すべり台社会」からの脱出」で大佛次郎文壇賞を受賞されました。おめでとうございます。
   
湯浅 : ありがとうございます。
   
河野: 実は私はその賞のことを知らなかったので大きく扱われて驚いたのですが(笑い)。受賞を目指されていたのですか。
   
湯浅 : 私もよく知らなかったんですよ(笑い)。目指していたわけではないんです。
   
河野 : 河野 私が湯浅さんと知り合ったのは、2006年11月に釧路で日弁連人権大会があって、「現代の貧困と生存権保障」というテーマでそのシンポジウムを行ったときに事務局長を務めさせていただいたのですが、そのときにパネリストとしてお越しいただいたのが初めてでした。
その前からお名前はうかがっていましたが、お目に掛かったのはそのときが初めてでした。それから翌年6月に「生活保護問題対策全国会議」の立ち上げをしましたが、それ以降一緒に活動する機会が増えました。
私の方はその後、生活保護問題・貧困問題に取り組むようになったり、大分で生活保護支援九州ネットワークの電話窓口を担当しています。生活保護の問題は最初は同行すれば簡単だという話を聞いて活動に入りましたが、実際やってみると難しいですね。細かい問題がたくさんあって。
   
湯浅 : 皆さんに関わってもらうために簡単ですよって言ってるんですよ。
   
河野 : そんな感じですね。
それで、湯浅さんは2005年に「あなたもできる、ほんとに困った人のための生活保護申請マニュアル」を出版されていますが、これはどういう発想で出版されたのですか?
   
湯浅 : とにかく当事者の方に読んでもらいたいということでなるべくくだけて書いたんですよ。生活保護の問題って難しい本が多かったのですよね。
   
河野 : 竹下さんの本とか・・・
   
湯浅: 宇都宮 あはは。名前出しちゃっていいんですか?
いやいや、竹下義樹弁護士や尾藤廣喜弁護士もくだけて書いているんですよ。でも、法律家のくだけるっていうのは限界があるっていうのと、「もやい」の相談に地方からの相談が増えたんですよ。
地方だと相談に付き添えないじゃないですか。当時はネットワークがなかったんですよ。同行支援のネットワークが。それで何とか一人でやって自分で申請できるようにしたいなという思いで書いたんです。
   
河野 : 「もやい」には全国から話を聞きつけて相談に来る方が多くなったのですか?
   
湯浅 : そう。相談といっても電話ですけど。
それで何とか一人でできるように、こちらが付き添わなくてもいいようにということで書いたんですよ。
   
河野 : なるほど。
それから、これは新聞でもよく取り上げられていますが、元々東京大学の大学院の学生時代にホームレス支援の活動に入られたという事ですけど。こういう運動に関わって、しかもその後、一貫して揺らぐことのなく活動を続けてきている原動力というのは何でしょうか。
   
湯浅 : 何でしょうね・・・。まあ、社会に対する怒りと、活動がおもしろいから。
   
河野 : おもしろい?どういうところがおもしろいのですか?
   
湯浅 : やりがいですよね。
   
河野 : 感謝してもらえるという?
   
湯浅 : 感謝してもらえるというか・・・う〜ん・・・感謝してもらえるというよりは、自分たちで道を作っていく、そういうやりがいですね。
   
河野 : 少しずつ何か変わっていくっていう実感ですか?
   
湯浅 : いや、少しずつ何か変わっていくという成果が出るときもあれば出ないときもありますけど。それらを含めてあまり今までやってた人がいないからという事なんですよ。自分たちが試行錯誤する事で道がついていくような、そういう、道を作るというやりがいを感じます。
   
河野 : 切り開いていくって事ですね。
   
湯浅 : 切り開けているかどうかは別問題ですがね。そういうことに取り組んでいる事によるやりがいですよね。
   
河野 : 昨年末、日比谷公園で派遣村を企画されましたが、貧困の組織化という意味で非常に成功したと思います。最初から注目されて成功すると思っていましたか?
   
湯浅 : いや〜・・・うーん・・・。ある程度の効果は狙っていましたが、あそこまでになるとは思ってなかったんですよね。あれは自分たちにしても驚きです。
   
河野 : そうですか。ぼくらは狙ってたのかと思ってたんですが、そうでもなかったんですね(笑い)。
   
湯浅 : 狙ってた説ってのもあるんですけど(笑い)。マスコミはある程度来ると思っていたし、厚労省前だからプレッシャーをかけようと思っていましたけど、本当に報道が来るかどうかとか、そういうのは全く。で、あんなにいっぱい人が来るとも思っていなかったし。
   
河野 : そうですか。
日弁連でも2009年2月に「貧困と人権に関する委員会」が作られて、大分県弁護士会でも8月に「貧困と人権に関する委員会」というのができたのですが。
   
湯浅 : ほお〜
   
河野 : それで、私は日弁連の方では「女性と子どもの貧困部会」に所属して、10月にはイギリスに調査に行くことになっています。湯浅さんは今後、貧困問題に関してどういう切り口で動こうと考えていらっしゃいますか?
   
湯浅 : まず貧困率の測定で一歩を刻むこと。次に基本的なところは子どもの問題じゃないかな。一番切り開きやすい。元々は無保険の子どもの問題で民主党が法改正に立ち上がった。今度、母子加算は子どもの問題で取り上げる。そうしているうちに貧困問題一般に広げていくということでしょうか。
   
河野 : 母子加算の話が今出ましたし、それから子ども手当、それから高校授業料無償化という政策が順に出てくるわけですが、こういう流れをもっと確実な物にしていくことで子どもの貧困率を下げるためにはどうしたらいいと考えますか。
   
湯浅 : 総合的な政策が必要だと思うんですが、基本は貧困率全体に焦点を当ててそこの動きを注視すること事だと思うんですね。だからイギリスはそれをやってる。貧困撲滅宣言とか。そのために教育をする。日本では貧困の問題は雇用問題として語られることが多いんだけど、雇用・年金・医療・住宅・教育、全部に関わってくる。そういう意味じゃ、国家戦略局の中にですね、そういうチームを作って予算の枠をそこである程度決めていくって事があっても本当はおかしくない。
   
河野 : 民主党の小沢さんがイギリスに調査に行っているけど、イギリスでは国家戦略局の半数が民間だと。湯浅さんが国家戦略局に入るって話はまだないですか?
   
湯浅 : ないです!(笑い)
   
河野 : 対談 大分県では市民団体として「反貧困ネットワーク・大分」が活動しているんですが、これまでは生活保護利用者の人に向けてとか派遣切りの労働者の人に向けて情報提供をするような集会をしてきたのですが、今後、地方・地域でどういう活動をしていったらいいのか、アドバイスをいただけるとありがたいのですが。
   
湯浅 : アドバイスっていうほどのものはないんだけど、私が最近言ってるのは「家族の貧困」を何とか可視化できないかと。
我々、都会では派遣切りの被害者の貧困を可視化したわけですが、地方ではどっちかというと派遣切りで路頭に迷っている人は数としては多くはない。どっちかというと家族が抱えて、だから社会的に見えない、というのが現状なんです。そういうのを可視化する仕掛けというのが作れんもんかなと思ってるんです。生活相談をやりますからいらしゃいと言っても多分来ない。労働相談ってんでもダメだろう、と。それこそ総合的な相続相談とか税務相談とかを絡めながら家族よろず相談みたいにして。
そん中から家族の貧困の問題が浮かび上がってくるような仕掛けをね。
   
河野 : 11月に日弁連で「女性・子ども・ひとり親世帯の生活支援ホットライン」という一斉相談会をやるんですが、確かに表現の仕方が難しいですね。家族の貧困を浮き彫りにする、実態をはっきりさせるって事は。それについて、何か考えていることがあるのでしょうか。秘密裏に?(笑い)
   
湯浅 : いや〜、秘密じゃないすけど(笑い)。貧困率との関係で言うと、ホームレスとか、派遣村とか、餓死とか、生活保護の水際作戦とかいうのは割と貧困問題として認知は進んだと思いますけど、その上ですよね。まだ、貧困問題として入ってなくて、そこに例えば修学旅行に行けない子どもとか、働いているけどうまく生活が回っていかない、食っているけど社会生活ができないとか、お葬式があっても香典を包めない高齢者とか、生存ギリギリラインのちょっと上くらいの人達、そこをどう、貧困問題として認知させられるかというのは、結局貧困率の問題を考えた時に大きいんじゃなかなと思うんですよね。そういう問題を貧困の問題と思わないので、だから民主党が下手に「貧困」なんて言葉を使うと共産党が喜ぶばっかりで中間層から反発食らってかえってマイナスだって思っちゃうんですよ。
   
河野 : 貧困という言葉を普通に使えるようにしたのは湯浅さんの功績ですよね。
   
湯浅 : まだまだ普通じゃないっすよ。
   
河野 : でもね、だいぶ一般化してきたんじゃないでしょうか。
   
湯浅 : まあね。
   
河野 : それでいろいろと主張しやすくなったんではなかと思いますが。
これからも元気で頑張ってください。
   
湯浅 : 3〜4日前に人間ドッグに入ってきたんですよ。
   
河野 : 結果はいかがでしたか?どこも悪いところはなかった?
   
湯浅 : いえ、結果はまだ2週間くらい先です。
   
河野 : 今の勢いなら病気の方が逃げていきますよ(笑い)。
では、今日はどうもありがとうございました。
   
湯浅 : こちらこそ、ありがとうございました。
   
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弁護士法人 おおいた市民総合法律事務所