河野弁護士対談
■2012年12月1日 木村達也弁護士 vs 河野聡対談
■2011年1月22日 雨宮処凜さん vs 河野聡対談
■2010年11月23日 弘至孝公証人 vs 河野聡対談
■2009年9月21日 湯浅誠氏 vs 河野聡対談
 
2009年8月16日 宇都宮健児氏vs河野聡対談
 
8月16日 、当事務所で宇都宮健児弁護士と河野聡が対談をしました。これまでの運動の経過、今後の展望についてじっくりお話を伺いました。

河野 : 河野 本日は遠方からお越しいただき、ありがとうございます。
宇都宮さんとは全国クレジット・サラ金問題対策協議会で二十年くらい一緒に活動してきました。私は宇都宮さんが貸金業者と果敢に闘っておられるのを見よう見まねでついて来たのですが、現在はあの頃とは隔世の感があります。2006年末には出資法金利20%への引き下げや年収の三分の一以上の貸し付けに行政処分という出資法、貸金業法改正が実現しました。宇都宮さんは日弁連上限金利引き下げ実現本部の代表代行としてその実現に尽くされてきましたが、これまでどういう苦労がありましたか。
   
宇都宮 : この改正貸金業法改正運動の時は、2005年に小泉郵政選挙というのがあって圧倒的に自民党が大勝したんです。だから政治状況としては非常に厳しい状況でしたね。それから当時、アメリカも日本のグレーゾーン金利の撤廃に反対していたので、金利引下げを巡る状況は厳しかった。そのため、実現に向けて運動の分母を広げなければいけないと考えました。そこで労福協(労働福祉協議会)と連携してクレサラ金利問題を考える連絡会議ができたんですが、それを通じて連合もこの運動に参加しました。
それから、日弁連で上限金利引下げ実現本部ができたことは大きな意味がありました。対策本部というのは日弁連全体として取り組むということですから、執行部を始め理事会、全国の弁護士会の執行部をあげての取り組みで、この運動をさらに広げることになったと思います。
   
河野 : 実現できた決め手は何だったのでしょうか。
   
宇都宮 : 運動の広がりが一番大きかったと思います。今までの運動だと署名は20万を超えたことはなかった。それが、今回の金利引下げ運動では340万人の署名を集めて国会に提出しました。さらに市町村議会や都道府県議会の決議採択運動をやって、43都道府県、1136市町村議会の金利引下げ決議を採択をさせたのは大きな影響があったと思います。こういう運動が世論を変えて、最終的には自民党の中でも金利引き下げ派が多数派になり、アメリカの抵抗を打破っていくことになりました。運動の盛り上がりが画期的な法改正を実現しました。
ただ、最初はこんなにうまくいくとは思っていなかった (笑い) 。なぜかこのときの運動はやることなすことうまく行ってね。私自身もこんなにうまく行っていいんだろうかと思うくらい (笑い)。
   
河野 : ええ、そのとおりでしたね(笑い)。
ところで、完全施行の時期が、遅くとも来年6月までということですが、それは間違いなく実現するのでしょうか。
   
宇都宮 : 基本的に今の体制として実行していくというのが政府の立場となっています。それに抵抗する貸金業界の動きがありますが、それはあくまでも少数派ですから我々がきっちり運動をやれば間違いなく完全施行は実現されると思います。
   
河野 : 完全施行になった後、借り入れができないなどの問題への対応はどうすればいいのですか。
   
宇都宮 : 宇都宮 一番重要な課題は、低所得者や貧困者の生活のため、それから債務整理をしたあとの生活再建を支援するためのセーフティネットの確立ですね。
2000年に日弁連はドイツやフランスの調査をやっています。あちらは日本と同じ資本主義的な経済体制を取っているんだけど、そこにはサラ金とかヤミ金はないし、深刻な多重債務問題は発生していなかったのです。その背景には銀行が消費者金融、事業者金融をやっているということと、銀行に融資を受けられない低所得者に対して、セーフティネットが張り巡らされていること。高利に頼らない社会を実現できるんだという確信を得たんです。でも、日本はそういうことになっていない。高利を規制するだけではなく、高利に代わり得るセーフティネットをどう充実させるか。生活福祉資金貸付けなど、公的な融資制度の充実とか生活保護制度を利用しやすくすること。これは基本的人権のひとつですから、誰もが利用できる社会にしていくことが高利貸しのない社会を実現していく過程だと思います。
   
河野 : ところで宇都宮さんは反貧困ネットワークという民間団体の代表でも活躍しておられますが、これはどういう思いからされているのでしょうか。
   
宇都宮 : これまで多重債務問題を30年間くらい取り組んできたのですが、多重債務の背景に貧困問題があるのではないかと考えました。貧困問題解決が多重債務問題の根本的解決になるのではないか、ということで、いろんな団体で一緒に2007年に反貧困ネットワークを作りました。当時は政治の世界では格差が議論されていましたが貧困を直視した政策や対策は取られていなかったし、社会的にも焦点が当たっていなかった。貧困問題の顕在化、可視化をさせなければならない。それには貧困当事者を支援する団体が声を上げなければならないと、ホームレス支援とか障害者支援とかシングルマザー支援とか外国人労働者支援とか派遣労働者支援とか、そういう人達とネットワークを作りました。
4〜5年前ホームレス総合相談ネットワークができたのですが、その活動に参加する中でホームレス支援をやっていた湯浅誠君と顔を合わせることになった。それがきっかけとなって反貧困ネットワークの立ち上げになった。湯浅君と知り合ったことが大きいですね。
   
河野 : 昨年、宇都宮さんが大分で講演された時に全国に反貧困ネットワークを作ろうという呼びかけがあって、大分でも反貧困ネットワーク・大分をつくりました。今年9月21日の午後2時からにアイネスで湯浅誠さんの講演会を開きます。
昨年末、年越し派遣村では宇都宮さんが名誉村長で湯浅さんが村長で、かなり社会的に反響を呼びましたが、今後はどういう活動を考えておられますか?
   
宇都宮 : 対談 年越し派遣村で実際に裏方をやったのは労働組合です。連合と全労連と全労協に加盟する労働組合に所属する人達で、特に労働者派遣法の抜本改正を訴える労働組合が母体になって取り組み、私たち反貧困ネットワークやその他の市民団体が協力しました。あの取り組みでとても良かったのは労働者派遣法の問題点や広がる貧困の実態を可視化したということです。まさに反貧困ネットワークが考えていたことが実現されました。
今後は、ネットワークが全国に広がることが重要です。大分にもできたそうですが、今年7月に山口、8月末には北海道の北見、9月には福島にできます。さまざまな団体が垣根を越えて貧困問題をアピールするという大きな役割を果たすことになります。各地の反貧困ネットワークがそれぞれの派遣村の中核になっていますよね。そういうことが重要です。
それから、この取り組みをいかに政治に届けるかということですね。ちょうど政権の変わり目だから市民運動とかネットワークの運動というのは政策提言をすれば政治の課題にしやすい、反映させやすい政治状況になっています。
   
河野 : 貸金業の金利の引下げ関係で政治に対して意見を反映させる手法はだいぶ身につけました。それが反貧困ネットワークにうまくつながっている感じがしますね。
   
宇都宮 : ヨーロッパ諸国は貧困の実態調査をやって貧困率を策定して、貧困の削減目標を立てることが国の大きな課題になっています。今年7月、総選挙を前に開いた反貧困ネットワークの集会で行った集会宣言でも、貧困率を国は持つべきである、貧困率の削減を重要な政策課題にすべきである、これを衆議院選挙の後の内閣総理大臣の所信表明で宣言すべきである、と申し上げています。
公明党のマニフェストには貧困率の調査と貧困率の削減目標という我々が言ったことがそのまま入っている。2年前までは貧困問題が政党の課題になっていなかったのに反貧困ネットワークの提言でほとんどの党のマニフェストに入ってきている。
一部の政党では経済成長率を上げることによって国民生活を豊かにするという考え方がずっと続いています。経済成長ができれば国民生活が豊かになる、経済成長率を伸ばすことによって景気を回復するまで待ってくださいという言い方をしています。ところが、昨年秋のリーマンショック前までのイザナギ景気を越える最長の好景気と言われていた間に国民は豊かになったかというと、むしろ貧困が広がっている。社会の健全さとか、人間らしい社会というのは経済成長率だけでは計れない。社会の健全さを表す基準として貧困率を持って、貧困率が削減されているかどうかを国家目標にすべきだと我々は提言しているわけです。
   
河野 : 多重債務や貧困問題を政治課題に反映させていくということで取り組んでおられる。これからもますますお元気にがんばっていただきたいのですが、健康診断を余りなさっていないとのことですね。時には健康診断を行ってさらなるご活躍をという皆さんの期待にお応えください。
私は今後もついて行きたいと思いますので、これからもご指導をお願いします。本日はありがとうございました。
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弁護士法人 おおいた市民総合法律事務所