判例
〜 当事務所の弁護士が獲得した画期的な判例を紹介します 〜
分 類生活保護
要 旨 生活に困窮するすべての国民に最低限度の生活を保障するとする法の目的に照らすと、生活保護の実施機関及びその事務が委任されている福祉事務所長等は、被保護者の属する世帯の最低生活費から控除すべき世帯の収入額の認定について、被保護者の同意があったとしても、実際には得ていない、実収入額を超える最低賃金収入額をその収入額とすることはできない。
裁判所 大分地方裁判所(宮武康裁判官、大島広規裁判官、大下良仁裁判官)
事件番号 平成24年(ワ)第860号
判決日 2014年1月27日
事件名 損害賠償請求事件
相手方 大分市
担当弁護士 河野聡
解 説  生活保護制度は、生存権(健康で文化的な最低限度の生活を営む権利)を保障する憲法25条に基づき、厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費と「収入」とを比較して、「収入」が最低生活費に満たない場合に、最低生活費から「収入」を差し引いた差額が生活保護費として支給されるという制度であり、生活保護費の算出の過程には、この「収入」がいくらであるかを認定するという作業がある。
 この裁判の原告は、大分市在住の生活保護受給者であり、職業の大工仕事を継続する必要性から、事業用自動車の保有を認められていたのだが、2002年ころから、大工仕事による収入が減少した。そうした中で、大分市福祉事務所長は、最低賃金以上の収入を上げることが事業用自動車の保有の条件とされていたことと、原告の大工仕事による収入の低迷を理由に、2002年12月から2012年1月までの長期間にわたって、原告の実収入額と大分県の最低賃金を基礎にして計算した収入額(1時間当たりの最低賃金×7時間×25日)とを比較して、その高い方の金額を、原告の当月分の「収入」とみなすという「みなし収入認定」を行い続けた。その結果として、原告には、実収入をもとに算定した生活保護費よりも低い金額の生活保護費しか、支給されないということが続いていた。
 そこで、原告は、大分市福祉事務所長による上記収入認定が違法であるとして、2012年12月20日に、大分市を相手に、実収入をもとに算定した生活保護費と現実に支給された生活保護費との差額分の経済的損害と、長期にわたり生存権を侵害され苦しい生活を余儀なくされ続けたことによる精神的損害との賠償(国家賠償法1条1項)を求める訴訟を提起したところ、
 市は、〆把稍其發砲茲觴入認定について原告との合意があった、大分市の自動車保有に関する取扱要領において、「車がその事業にとって必要不可欠であって、しかも収入充当額が(@最低時給×7H×25日)円を超える場合には保有を容認しても差し支えない。」と定めており、これを踏まえて、指導指示書において、「指導指示事項 車の保有容認及び営業以外の使用禁止について 生活保護法では車の保有及び使用は認められていませんが、最低賃金以上の収入があること、並びに営業車としての使用に限ることを条件に保有を容認します。」との指導指示を行なっていたのであって、これに基づき生活保護の停廃止すらできた以上は、それよりも緩やかな保護費の減額は適法である、8狭陲賄梢Δ靴督名錣了纏に就けば最低賃金以上の収入を得られるのに大工仕事に固執したために最低賃金を得られなかったのであるから、稼働能力を活用していない、げ召忘把稍其發亡陲鼎収入認定が違法であったとしても、原告との合意に基づくものであるから過失相殺されるべきである、と主張した。
 この事件に対して、大分地方裁判所は、最低賃金に基づく収入認定については、「生活に困窮するすべての国民に最低限度の生活を保障するとする法の目的に照らすと、生活保護の実施機関及びその事務が委任されている福祉事務所長等は、被保護者の属する世帯の最低生活費から控除すべき世帯の収入額の認定について、被保護者の同意があったとしても、実際には得ていない、実収入額を超える最低賃金収入額をその収入額とすることはできない」との判断を示し、過失相殺については、「大分市福祉事務所長は、保護の実施機関である大分市長から保護の決定及び実施に関する事務を委任された者として、被保護者の生活状況等に照らして、適切な保護を実施すべき注意義務があるというべきであって、被保護者の意向によって法に違反する保護を実施することは、当然許されるものではないから、被保護者が保護の実施について、殊更に虚偽の事実を述べた結果、大分市福祉事務所長が適切な保護を実施することができなかったなどの特段の事情がある場合を除いて、違法な決定について、被保護者に帰責すべき理由はないというべきである。」と判示したうえ、本件においては「特段の事情は認められない」として、過失相殺を否定して、原告の請求を全部認容する判決を下した。
 現実に収入がないにもかかわらず「みなし収入」を設定すること自体が違法であることは明らかにされたという点において、この判決の意味は大きいといえる。
 なお、大分市は控訴をせず、この判決は確定した。
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分 類 時効
要 旨 銀行が長期延滞後で償還期間も経過した後に、自動振替償還契約に基づく預金通帳からの振替で弁済をさせた場合に、承認による時効中断は認められない。
裁判所 福岡高等裁判所
事件番号 平成17年(ネ)第1032号
判決日 2006年5月23日
事件名 貸金等請求控訴事件
業者名 株式会社豊和銀行
担当弁護士 河野聡
解 説  国民金融公庫の代理貸しを銀行した事案で、自動振替償還契約に基づき自動振替で返済がなされていたが、途中から返済が滞り、償還期間も経過した。(以下、事案を簡略化して説明する。)最終返済から5年の商事時効期間経過直前に、銀行は、借主がその銀行にしていた1200円程度の貯金の中から、1000円について、自動振替の処理をして、返済したものとして処理をした。
 その後、銀行が借主に対して、債務残額約1500万円と遅延損害金の支払いを求めて提訴したが、借主は時効を主張、銀行は上記自動振替が承認による時効中断に当たると主張した。
 一審大分地裁2005年10月4日判決(大分地裁平成16年(ワ)第347号、浅見宣義裁判官)は、債務者が弁済をせず債務承認となる事態を避けたいのであれば、自動振替償還依頼した預金口座から預金を引き出し、自動振替償還が不可能になるようにすれば足りるのに、そのような措置をしなかったことなどを理由に、自動振替償還契約に基づく自動振替も時効中断を生じる承認に当たるとして、借主の時効の主張を認めなかった。
 これに対して二審福岡高裁判決は、自動償還契約には、償還期間中の自動振替が規定されているだけであること、本件の自動振替がもっぱら貸金債務の商事時効の中断の効果を生じさせるために銀行によって一方的になされたものであり、借主にとって予想外の出来事であったことを認定したうえで、消滅時効の中断事由である承認とは、時効の利益を受ける当事者が、時効によって権利を失う者に対して、その権利の存在することを知っている旨を表示することであるから、本件の自動振替は債務の承認には当たらないとして、債務の時効消滅を認めた。
 銀行は上告受理申立をしたが、最高裁(平成18年(受)1567号)は、2006年10月3日付け決定で、上告不受理とした。
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分 類マンション問題
要 旨 分譲マンション販売業者がペットの飼育の可否について十分な説明をしていなかった行為は不法行為に該当する。
裁判所 福岡高等裁判所第五民事部(中山弘幸裁判官、岩木宰裁判官、伊丹恭裁判官)
事件番号 平成17年(ネ)第679号
判決日 2005年12月13日
事件名 損害賠償請求控訴事件
業者名 株式会社三栄都市
担当弁護士 河野聡
解 説  マンション分譲販売業者が、当初契約した購入者には犬猫等のペットの飼育は禁止していると説明し、一定時期以後に契約した購入者にはペットの飼育が可能であると説明していたが、業者の用意していた管理規約案にはペット飼育禁止の記載はなく、後に管理組合で決定されることになっていた。住民間でペット飼育が問題になった後に開かれた管理組合総会では、販売業者の説明が区々であり、入居者はそれぞれの期待を持って入居したことを考慮して、組合総会までにペットを飼育していた者はその動物一代に限って飼育が可能という規約を決めた。
 このため、当初ペット禁止と聞いてマンションを購入したペット嫌いのAは、後に一代であってもペットが飼育されることになることは耐えられないとして慰謝料を請求し、ペット飼育可能と聞いてマンションを購入して犬を飼育したBは、管理組合総会直前に犬が死亡して新たな犬を購入したが、管理組合総会によって犬の飼育ができないことになった点の慰謝料と新たな犬の購入費用を請求し、マンションをペット飼育可能と聞いて契約したが、実際にはペットを飼育しなかったCは、今後ペットを飼育できなくなってしまったことの慰謝料を、それぞれ請求した(慰謝料はいずれも金一〇〇万円を請求)。
 第一審おおいた地方裁判所二〇〇五年五月三〇日判決(平成一六年(ワ)第二九七号、四四三号損害賠償請求事件)では、Aについて慰謝料一〇万円と弁護士費用一万円、Bについては慰謝料七〇万円、新たな犬の購入代金一一万五〇〇〇円及び弁護士費用八万五〇〇〇円の合計額の損害賠償を命じたが、Cについてはペットの飼育を希望していた事実が証拠上認められないとして請求を棄却した。
 控訴審福岡高等裁判所判決は、Aについての慰謝料額を三〇万円、弁護士費用を五万円に増額したが、B、Cについては第一審判決を維持した。
 判決は、マンション等の集合住宅では、各入居者の生活形態が相互に重大な影響を及ぼす可能性があるところ、マンション内での動物の飼育は、衛生問題、騒音、事故等入居者の生活に影響をもたらすおそれがある他、動物の習性等により他の入居者に不快感を生じさせることがあるので、少なくとも購入希望者がペット飼育禁止、飼育可能のいずれを希望しているかを把握できるときには、将来無用なトラブルを招くことがないよう正確な情報を提供するとともに、途中の一定時期以降ペット飼育可能として販売する場合には、入居者間でトラブルとなることが予測できるのであるから、先の入居者に対して了解を求めるべき信義則上の義務を負っているものと解されるとした。
 そして、Aについては、契約前にペット飼育禁止のマンションであるか否かを確認していたのであるから、被告会社従業員は、ペットの飼育の可否について後日管理組合で決せられるものであることについて正確な情報を提供すべき義務がある上、後に飼育可能として販売する場合には、Aに対して了解を求める義務があったのに、これを怠り、Aの信頼を裏切り、住民間にペット類の飼育に関する問題を生じさせるなどの不利益を与えたのであるから、不法行為を構成し、Aの精神的苦痛に対して慰謝料請求権が発生するとした。
 Bについては、被告会社は、ペット飼育に反対する意思は有している可能性がある従前の入居者と、飼育を希望する後の入居者との間で予想される紛議についての予防措置を特段に配慮しないまま、ペット飼育可能と説明するようになったものであり、予想すべき紛議発生の危険性、規約制定によりペット類の飼育ができなくなる可能性等について具体的説明をなす法的義務を怠ったものであるから、不法行為が成立し、Bの精神的苦痛に対しての慰謝料請求権が発生するとした。
 ペット飼育の可否について、中途で販売業者の方針が変更した事案で、ペット飼育禁止と確認して購入した者と、ペット飼育可能との前提で購入してペットを飼育した者の両方の立場の者に対して、それぞれ販売業者の説明義務を認め、いずれについても不法行為の成立を認めたという点で極めて意味の大きい判決と言える。
 なお、判決は控訴審で確定した。
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分 類 欠陥住宅
要 旨 本件は、鉄骨造二階建ての理髪店併用住宅(請負代金建物3347万円)について、外壁の多数のひび割れと雨漏り等の不具合の原因が、鉄骨接合の瑕疵、溶接の瑕疵(契約書添付の小規模鉄骨構造標準図違反及び契約図書違反等)によるものであり、現場での補修が著しく困難であるから立て替えを要するとして、立て替え費用、営業損失、慰謝料など、合計金4955万円を請求した事案である。
裁判所 大分地方裁判所民事第二部
事件番号 平成14年(ワ)第491号
判決日 2005年8月4日
事件名 損害賠償請求事件
業者名 大分バス株式会社
担当弁護士 河野聡
解 説  一級建築士の意見書に基づいて主張・立証を進めていたが、裁判所が建築業者申請による鑑定を採用したことから、さらに私的に鉄骨溶接部分の超音波探傷検査を実施して提出した結果、建築業者側が鑑定申請を取り上げるに至った。
  法律構成としては、瑕疵修補代わる損害賠償請求で、地盤や基礎の瑕疵は主張せず、鉄骨接合の瑕疵や溶接の瑕疵だけで立て替えの必要性を主張していたが、判決は全面的に認め、請負代金を超える立て替え費用と、補修期間中の営業損失、引っ越し費用、立て替え中の賃借建物の賃料、慰謝料など、合計金4726万円の支払いを命じた。
  慰謝料を200万円認め、調査鑑定費も全額認めている。
  業者側が控訴したが、原判決に基づく仮執行が奏功し、結局業者側が控訴理由書提出期限直前に控訴を取り下げ、判決が確定した。
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弁護士法人 おおいた市民総合法律事務所